あぁ、徒然なるままに

私の趣味や日々の出来事についてを、自分の独断と偏見による、やや倒錯した文章で徒然なるままに書き記すブログです。

midnight runaway

いきなり何のこっちゃい思うでしょうが、
ま、端的に言えば「夜逃げ」ですね。

少々前の話になりますが、
取引先の会社の社長が、いきなり

「会社を閉鎖します、申し訳ございませんでした。」

と言った内容の紙っぺら一枚を各取引先に送ったまま、
ドロンと夜逃げしてしまいまして。

弁護士に委任して会社を清算するでもなく全てを放り出し、
会社のお金一切と、経理データの入ったパソコンを持ち出して、
自宅も何もかも残したまま、ふっつり姿を消したそうです。
家族のいない人だったそうので、着の身着のまま金だけ持って、車で逃走。
文字通りの「蒸発」「失踪」。
その会社の残された社員の人々は、何も聞かされておらず、
全くの寝耳に水だったとか。

「取引先の夜逃げ」は、過去に何件か遭遇したことがありましたが、
それでも今までは、

「担当者が行ってみたら、事務所がもぬけのカラだった」

とか、

「連絡が取れなくなったと思ったら、事務所をそのままに姿を消していた」

とか、どこか間接的でした。
それが今回のように、残された社員から色々と話を聞いたり、
ナマの情報がリアルタイムで入って来ると、色々なことが見えたり、考えたりします。

個人からも金を借りていたとか、
夜の街に頻繁に繰り出していたとか、
それが原因で奥さんと別れて、今、独り身だったとか。
(だから身軽に一人で逃げた)

事実と憶測が入り混じって、非常に困惑もしますが、それはさて置いても、
実はこの「夜逃げ」が、どの方面でも一番処理に困るパターンなんですよね。

弁護士が付き、裁判所に届け出て、破産の処理が法的に開始されれば、
あとはこちら債権者も、法に則った処理をせざるを得ないと言うか、
逆に言えば、法に則って処理を進めれば良いのですが、
「夜逃げ」したとなると、どうにも処理できないんですよ。

残った会社の人達が会社を清算する方法もありますが、
今回は、社長本人が一切合財を持ち逃げしているため、
弁護士費用も捻出出来ません。
残された社員たちが、ただでさえ給与未払になった自分たちの会社を、
わざわざ私費を投じて会社を清算させるワケもありませんし、
結局、弁護士も裁判所も介入していないので、廃業の登記もされず、
形骸化していても会社は残っている訳ですね。

そうなると、売掛金債権がある我々も、請求書を送り続けるしか手段が無く、
事実上の会社の消滅となった頃を見計らって、債権放棄するしかないのです。
三者が破産申立をする手もありますが、抵当権をガッチリ取ってあるとか
余程の何か手当てをしていて、大きなメリットがあるなら話は別ですが、
破産させるための費用と、裁判所に積む預託金が大きくなるので、
所詮は経費倒れになってしまいます。
取引先が倒産した時のための保険というものもありますが、
それは長くなるので、今回は置いておくとして。

また、貸付している銀行等が動き始めて、
担保に取っている会社の不動産を競売し、
資産が換価されると言うパターンもありますが、
大体銀行は、評価の高くない会社に対しては貸付しませんし、
もし貸付するとしても、根抵当と極度額を登記して不動産を押さえ、
真っ先に自分たちが取りっぱぐれの無いようにします。
また、万一のときの信用保証協会も絡むと思いますし、
元々が貸倒れした時のことを想定して貸付していますから、
銀行自体は大したダメージはないでしょう。

話が逸れましたが。

さて、ここからが今回の本題です。

今まで書いた内容を見ると、何だか「夜逃げ」バンザイのようにも聞こえますが、
実は逃げた人には、ものすごくシビアな現実が待っています。

法的手続きをしていないので、当人への債権の取り立ては止まりません。
大体は、社長自身が会社の連帯保証人になっているでしょうから、
銀行も取り立てに現れるでしょうし、不動産等の個人の資産が担保に取られていたら、
全て差し押さえられます。
その不動産もいずれ競売にかけられ、本人の帰る所は物理的に消滅します。

もしヤミ金にも手を出していたら、もっとひどいことになります。
理屈の通らない強硬な取り立てに晒され、色々と危険な目に遭うでしょう。

その取立から逃れるべく、違う土地へと逃げる可能性もありますが、
足跡が付くので、実は住民票を移したくとも移せません。
住民票を移した途端に、銀行が取り立てに現れたと言う事例も少なからずあるようです。

住民票を移せないワケですから、引っ越しも出来ません。
住む所を確保できず転々とし、免許証の更新も出来なくなり、
そのうち自分の身分の証明もおぼつかなくなり、職にも就けません。
日雇いの仕事くらいしか稼ぐ術は無くなり、そのうち犯罪に手を染める人も多いようです。

その一方で、債権や借金の取り立てだけでなく、会社の金を持ち逃げしていることから、
「窃盗」若しくは「業務上横領」として、被害届を出されて刑事事件になる可能性があります。
ここで「犯罪者」のレッテルが着けられるワケですね。
それに加え、連絡が取れなくなり失踪した事実がありますから、親族や、残った社員たちから
「捜索願」が出される可能性も出て来ます。

捜索願を出されると、当人が何か事件・事故に遭遇して警察が関わり、本人確認をした時点で
「捜索願が出されている」と、捜している人達に当人の居場所がバレる可能性もグンと上がります。
状況によって、警察も本腰を入れて捜索するか否かはありますが、それは今回置いといて。

そうなると、いつどこで、誰が追いかけて来るか。
銀行か、取引先か、ヤミ金か、会社の人か、家族か、警察か。
その全てにビクビクしながら、住む所も、帰る所も、食べて行く術も無く。
一体いくら持ち逃げしたのかは知りませんが、その汚れた手持ちのお金だけで、
果たして何年生きられるでしょうか。

破産にせよ何にせよ、会社を整理するには弁護士費用等を含め、
100万以上のお金がかかることもあります。
しかしその一方で、会社の債務は一体いくらあったのか。
それを考えれば、会社を整理するためのお金くらいはあったはずなのです。
しかも法的に整理すれば、自分も再出発することだって出来ます。

「頑張ったけれどもダメでした、ごめんなさい。」

やましいことが無ければ、必要以上に責める人だって少ないはずです。

それを、その整理するお金すらケチって、横領して逃亡するとどうなるか。
会社の債務の時効は5年、個人の債務の時効は10年。
「横領」の事実が確定し、捕まると、懲役も最長で10年。

財産だけでなく、人間関係も何もかも失い、
下手をすれば人生のうち、最悪20年近くを棒に振ることになりかねません。
最終的にボロボロになってから、ようやく弁護士に駆け込む人も少なからずいるようです。

私が直接話を聞いた弁護士も言っていました。

「バカだねぇ、逃げたって、何も良いことはないのに。」

決死の鬼ごっこで得た一時の自由の後は、先述の通り、何もかも自由が利かなくなります。

一時だけ針のムシロを経験して、その後は堂々とやり直しの利く人生と、
何もかも放り出して、十数年をひたすらコソコソと逃げ回り、何も残らずボロボロになっていくのと、
どちらを選ぶのが正解なのかは、火を見るより明らかだと思うのですが。
それとも、会社を清算すらできないような、夜の街の交際費とか、私的流用(←業務上横領)とか、
本当に何かやましいことでもあったのでしょうか・・・?

汚れたお金を手に、全てをかなぐり捨てた代償。
逃げた当人は知ってか知らずか、余りにも安直な逃亡の果てにあるのは、更なる「絶望」だけ。
責任から逃げたものには、更に辛らつな未来が待っています。
果たして当人は、それに耐えられるでしょうか。

義務と責任を放棄した不届者に、災いあらんことを。


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