あぁ、徒然なるままに

私の趣味や日々の出来事についてを、自分の独断と偏見による、やや倒錯した文章で徒然なるままに書き記すブログです。

エレベーター

夏だ!
マッパだ!
・・・よし、語呂が合ったぞ。(意味不明)


さて、やってまいりました、この季節。
季節の際物、何か一つはネタを書かなきゃ気がすまぬ、と言うワケで。
小学校の頃に読んだ本からのお話を一つ。
・・・古いなぁ、何十年前の話だ。(自爆)


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とあるデパートでのお話。

デパートの営業終了後、警備のために、社員が交代で
6階の宿直室で夜を明かすのだが、このデパートでは、
その宿直の際に地下の食料品売り場から、
夜食として食料品を「失敬」できるという特権があった。

この日の当番は、若手の社員Aと、先輩の社員B。

夜も更けてきた頃、そろそろ夜食を取ろうかという話になったが、
社員Bがなかなかどうして、夜食調達に行こうとせず、

B 「俺、いいわ。部屋で待ってる。」
A 「え、でも、何か食べたいものとか無いんですか?」
B 「任せるわ、適当に見繕って。」

Aは一人宿直室を出て、非常口の明かりしか点いていない暗い売り場の中を
懐中電灯で照らしながら、エレベーターへ。

懐中電灯に照らし出された紳士服売り場のマネキンを人影と見間違え、
一瞬ドキッとするも、そのまま歩みを進めるA。

もちろん、売り場のフロア一面には自分しかおらず、
静まりきったフロアに、自分の靴音だけが鳴り響く。

普段、数え切れないほどの人が行き来するデパートの売り場が、
昼間の賑わいが嘘のようにシンと静まり返り、少し薄ら寂しい雰囲気のなか、
ちょっとした怖さを感じ始めた頃に、エレベーター前に到着。

エレベーターのボタンを押すと、休止状態だったエレベーターに電気が点き、
一呼吸置いて中が明るくなり、ドアが開いた。

目的地は、地下2階の食料品売り場。

ゴゥンと扉が閉まり、エレベーターは地下へ降り始めた。

途中、ガリガリゴリと、何か引っかくような変な音が聞こえたが、
その音が何なのかを確認する間も無く、地下2階に到着。

Aは、その辺に積んであった買い物籠を手に、
懐中電灯で照らしながら食料品売り場の散策を始めた。
小さめの弁当、カップのサラダ、から揚げのパック、サラミチーズ、
そして、お酒も少々。
二人分の食料を適当に籠に入れ、さて宿直室に戻ろうと
エレベーターに向かったところ、先ほどのエレベーターが無い。

「B先輩があとから来るのにエレベーターを呼んだのか?」

しかし、エレベーターは動いている気配が無いため、Aはボタンを押すと、
エレベーターの電光表示は、4階から動き出した。

「先輩は宿直室だし、誰がエレベーターを動かしたんだろ・・・」

一抹の不安を残しつつ、降りてきたエレベーターに乗るA。

宿直室のある6階を押したが、妙な不安感を覚え、扉が閉まるまでが
異様に長く感じられた。

エレベーターは動きだし、Aは移り変わる階数の電工表示を眺めていた。

地上1階・・・2階・・・3階・・・4階・・・
ここでエレベーターは止まってしまった。
ランプは4階と5階の間を点滅したまま。

「何だこれは?」とAが思っていると、いきなりエレベーターの扉が開いた。
目の前には、4階と5階の間のコンクリートの壁。
その壁には、何やら妙な黒ずんだシミが一面に広がっていた。

Aがそれを見た矢先、低く呻くような声が聞こえ始めた。

「・・・お・・・ぉ・・・おお・・・お゛・・・あ゛ぁ・・・」

不気味なものを感じたAは、必死に「閉まる」ボタンを連打すると、
扉は無事に閉まり、目的の階へ動き出した。

エレベーターが宿直室のある6階に着き、
エレベーターを降りたAは、冷や汗でびっしょりだった。

暗闇の売り場の中を、懐中電灯も点けずにひた走り、
宿直室に飛び込むA。

「どうした!?」

Aは、今あった出来事をBに話すと、

「そうか、やっぱりお前も見たか・・・
 だから行きたくなかったんだよな、俺・・・」

Bの話を聞くと、このデパートの建設中、作業中にエレベーターが動き出し、
作業員一人が挟まれて死亡する事故が起きていた。
それが4階と5階の間だったらしく、壁のシミは挟まれた作業員の血の跡で、
何度消そうとしても浮き上がってくるらしい。
社内でも、半ば公然の秘密となっていたようだ。

エレベーターが動き出した時の何か挟まったようなような音は当時の再現で、
聞こえてきた呻き声は、死んだ作業員の断末魔だったのだろう。


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